■ キーメッセージ
核融合エネルギーは、2025年から2026年にかけて産業化の決定的なターニングポイントを迎えている。
テキサス大学による磁気閉じ込め設計の10倍高速化、中国EAST炉の17分46秒記録、米国NIF(国立点火施設)による核融合点火の連続達成など、科学的成果が急速に積み重ねられている。
同時に、Commonwealth Fusion SystemsのARC計画(2030年代初頭グリッド接続目標)、TAE TechnologiesのGoogle・Chevron投資(1.5億ドル)、Helion EnergyのMicrosoft電力購入契約(50MW、2028年予定)など、民間企業による商用化が急ピッチで進行中である。
2025年の核融合スタートアップへの新規投資は26億ドルに達し、累計投資額は71億ドルに到達。日本企業コンソーシアムによるCFS投資も実現し、グローバルなエコシステムが確立されつつある。
本報告書は、この激動する市場環境において、技術動向・投資動向・規制枠組み・産業化戦略を統合的に解説する、産業・技術アナリスト向けの必読資料である。
【報告書の内部構成と活用】
本報告書は、以下の構成で、段階的な理解を支援する:
- 導入層(第1~3章):技術的ブレークスルーから産業化課題へ
- 深掘層(第4~17章):市場・投資・商用化動向の詳細分析
- 制度・政策層(第18~31章):規制枠組み・ガバナンスの国際比較
- 最新トピック層(第32~41章):直近の注目イノベーション
- 科学的基礎層(第42~69章):技術ブレークスルー・先端研究
- 産業実装層(第70~94章):企業事例・材料・実証施設
各章は独立した読解が可能な構成となっており、関心分野に応じた選択的な活用も推奨される。
■ 提言骨子
【技術領域における推奨アクション】
1. 要素技術の戦略的強化
- 高温超伝導磁石(HTS)技術のコンパクト化・高磁場化への集中投資
- プラズマ制御・AI予測技術の高度化(ディスラプション予測、プロファイル最適化)
- 燃料サイクル・トリチウム管理技術の実装化、トリチウム増殖ブランケットの早期実証
2. 産業応用の具体化
- パイロットプラント・実証炉向け部品の国内産業化計画の策定
- 液体ヘリウム冷却システム、タングステン複合材、低放射化鋼材の供給チェーン確保
- デジタルツイン・AI制御システムの汎用化・商用化
【市場・事業化における推奨アクション】
1. 民間投資の促進メカニズム構築
- 官民共用研究施設の運営・利用促進体制の整備
- スタートアップ育成・エコシステム形成への政策支援の継続・強化
- ファンドの組成支援、税制優遇措置、規制サンドボックス活用
2. グローバルなパートナーシップ構築
- CFS、TAE、Helion等主要プレーヤーとの技術協力・資本提携
- 日本企業コンソーシアムの継続・拡大、新規参加企業の募集
- 国際的なサプライチェーンにおける日本企業の位置付け確保
3. PPA(電力購入契約)の先制的検討
- データセンター・半導体製造工場等の大規模電力需要家との前提条件協議
- 地域の電力会社・自治体との協力体制の構築
- 2030年代の商用電源からの供給可能性の事前確保
【規制・社会受容性の推奨アクション】
1. 規制枠組みの整備加速
- 原子炉規制法外での安全基準・ガイドラインの整備(日本モデルの確立)
- トリチウム管理規制の国際標準化への参加・主導
- 環境影響評価プロセスの早期確立
2. 社会的受容性の確保
- 放射線安全性に関する科学的な国民説明・情報提供の実施
- 地域コミュニティとの対話プロセスの構築
- 既存エネルギー産業従事者への転職支援・地域経済対策の企画
3. 国際標準化への参画
- IAEA核融合研究協議枠組みへの積極的参加
- ISO国際核融合材料規格の策定への貢献
- 多国間安全基準調和への日本の主導的役割発揮
【組織体制・人材における推奨アクション】
1. 横断的な推進体制の確立
- 経済産業省・文部科学省・原子力規制庁の連携強化
- 官民合同のタスクフォース・ワーキンググループの組成
- 定期的なロードマップ見直し・進捗管理メカニズムの構築
2. 人材育成・確保
- 大学の核融合専門教育プログラムの拡充
- 高度人材の国内確保・国際交流の促進
- 産学連携による実践的キャリア開発プログラムの創設
3. データ・知見の共有化
- 官民共用施設でのデータベース・ナレッジベースの構築
- 国際的な研究成果の迅速な国内展開体制
- オープン・イノベーション拠点としての国内基盤形成
■目次■
【 概説・概況 】
1 核融合(フュージョン)エネルギーの技術革新と研究開発の急進化
2 核融合エネルギーの産業化フェーズと日本の戦略的課題
3 核融合エネルギーの社会実装と経済的インパクト
【 市場・投資動向 】
4 2025年の核融合産業投資 - 民間企業への26億ドルの新規投資
5 累計投資額の急増 - 核融合スタートアップ全体で71億ドルに到達
6 グーグル・シェブロンのTAE投資 - 1.5億ドルの資金調達ラウンド
7 グーグルとCFSの200MW電力購入契約 - 2030年代初頭のARC発電所から
8 マイクロソフトとヘリオンの電力購入契約 - 2028年までに50MW供給予定
9 日本企業コンソーシアムの投資 - 12社によるCFS社への投資
【 市場・商用化動向 】
10 商用核融合炉ロードマップ
11 核融合のエネルギー政策への影響評価
12 核融合における電力系統連携実証プロジェクト
13 核融合の投資ファンドラウンド動向
14 核融合における発電コスト予測モデル
15 核融合における保険・リスク管理動向
16 核融合技術のライセンス市場
17 核融合燃料サプライチェーン
【 政策規制・国際協力 】
18 G7エネルギー大臣会合声明における核融合位置づけ
19 IAEA核融合研究協議枠組み
20 核融合のコンテキストにおけるトリチウム取扱い規制
21 核融合における安全・環境アセスメント指針
22 核融合のコンテキストにおける各国再生可能エネルギー補助金
23 国際核融合材料規格(ISO)の現状と展望
24 核融合のコンテキストにおける日米欧連携研究パートナーシップ
【 規制・ガバナンス 】
25 核融合産業協会(FIA)のガイドラインと業界標準策定
26 核融合における環境影響評価プロセスと評価基準
27 国際原子力機関(IAEA)の第30回核融合エネルギー会議とグローバル規制調和
28 日本の核融合安全基本方針と原子炉規制法からの除外
29 核融合のコンテキストにおける副産物材料枠組み
30 核融合のコンテキストにおける米国ADVANCE法の制定
31 英国の商用核融合規制と早期の規制枠組み確立
【 最新の注目トピック 】
32 商用核融合炉の立地選定と2030年代実現に向けた具体的準備
33 量子コンピューティング融合応用と複雑最適化の高速解決
34 エネルギー豊富時代の到来予測と2030年代の社会変革可能性
35 クロスマシン破綻予測とAIモデル汎用性
36 マイクロ核融合技術と教育・研究用小型システム
37 異種原子核融合の探求と代替反応の可能性
38 遠隔核融合実験とFusion-as-a-Serviceの概念
39 核融合材料の協調進化設計と不確実性環境での材料開発戦略
40 核融合専用AIデータセンターとアルファリング社の世界初取り組み
41 核融合炉のUAV検査システムとデジタルツイン統合点検
【 ブレークスルー・科学的成果 】
42 70年来の核融合問題解決 - テキサス大学チームによる磁気閉じ込め設計の10倍高速化手法開発
43 TAE Technologiesの7000万℃プラズマ達成 - 簡素化装置による安定プラズマ生成
44 ドイツヴェンデルシュタイン7-Xの43秒記録 - ステラレーター型炉での新記録
45 フランスWEST炉の新記録 - 22分17秒のプラズマ持続時間記録を2025年2月に樹立
46 核融合点火の連続達成 - 米国国立点火施設(NIF)が2022年に続き複数回の正味エネルギー獲得を実現
47 逆三角形プラズマ形状の発見 - 従来より安定で効率的な新プラズマ形状
48 国際熱核融合実験炉(ITER)の超伝導マグネット完成 - 史上最大最強のパルス超伝導マグネット
49 中国EAST炉の17分46秒記録 - 2025年1月に達成された前記録
【 技術的ブレークスルー 】
50 スマート磁気センサーによる制御の全体像
51 トカマク-ステラレータハイブリッド構造の全体像
52 プラズマ加熱RFアンテナ技術の全体像
53 マシンラーニングを用いたプラズマ予測の全体像
54 レーザー慣性閉じ込め強度向上の全体像
55 高温プラズマ閉じ込め技術の全体像
56 高性能救熱材による耐熱壁の全体像
57 磁場逆転層(RFP)閉じ込めの全体像
58 周期的マグネトハイドロダイナミクス制御の全体像
59 超伝導コイル材料の高性能化の全体像
【 先端研究開発テーマ 】
60 デジタルツインによる炉内シミュレーションの全体像
61 ドリフト波励起プラズマ制御の全体像
62 プラズマ-壁相互作用モデルの全体像
63 フラックス保持ヘリウム冷却システムの全体像
64 ヘリウム湯沸かしサイクル熱回収の全体像
65 軽元素燃料(D-^3He)反応研究の全体像
66 自己生成電流駆動プラズマ安定化の全体像
67 小型モジュール式核融合発電の全体像
68 二重層プラズマ境界構造の全体像
69 粒子ビーム注入システムの全体像
【 先端技術・R&D 】
70 MIT - マサチューセッツ工科大学 - CFS共同設立とSPARC炉開発
71 テネシー渓谷公社(TVA) - タイプワンエナジーとの商用化協力
72 トリチウム増殖ブランケット - 自給自足燃料サイクル
73 プラズマ対向材料の開発 - タングステンベース複合材料
74 英国原子力公社(UKAEA) - STEP計画での先進的取り組み
75 磁気陰影検出AI - HEAT-MLによる安全領域特定
76 多機関破綻予測モデル - 機械学習による運転安全性向上
77 中性子耐性材料 - 14.1MeV中性子対応材料科学
【 材料科学・エンジニアリング 】
78 FLiBe溶融塩と液体増殖材としての可能性
79 スパークプラズマ焼結(SPS)とタングステン複合材の製造技術
80 セラミック増殖材Li2TiO3とLi4SiO4の最適化
81 ベリリウム増倍材と中性子経済向上
82 液体金属壁システムとゼネラル・フュージョンの革新的アプローチ
83 水素透過バリアとトリチウム漏洩防止技術
84 低放射化鋼材の開発と長期廃棄物問題の軽減
【 実証実験施設 】
85 ITER(国際熱核融合実験炉)の全体像
86 JT-60SA(日本・欧州連合共同実験装置)の全体像
87 SPARC(米国・MITプログラム)の全体像
88 Wendelstein 7-X(ドイツ・ステラレーター型装置)の全体像
89 EAST(中国・超伝導トカマク装置)の全体像
【 技術的課題 】
90 核融合における大電流電源インフラ整備
91 長寿命トリチウム閉じ込め技術の課題とリスク
92 α粒子自己加熱の実現に伴う課題とリスク
93 テラワット級レーザー安定動作の課題とリスク
94 核融合におけるプラズマ診断装置の高分解能化
95 プラズマ不均一性の抑制に関する課題と対策
96 高性能真空チャンバー設計の課題と対策
97 磁気コイルの衝突負荷保証に関する課題と対策
98 耐放射線材料の劣化対策における課題とリスク
99 大規模熱除去システム構築の課題と対策
【 技術的課題 】
100 α粒子自己加熱の実現に伴う課題とリスク
101 テラワット級レーザー安定動作の課題とリスク
102 核融合におけるプラズマ診断装置の高分解能化
103 プラズマ不均一性の抑制に関する課題と対策
104 高性能真空チャンバー設計の課題と対策
105 磁気コイルの衝突負荷保証に関する課題と対策
106 耐放射線材料の劣化対策における課題とリスク
107 大規模熱除去システム構築の課題と対策
108 核融合における大電流電源インフラ整備
109 長寿命トリチウム閉じ込め技術の課題とリスク
【 参画企業 】
110 株式会社日立製作所
111 三菱重工業株式会社
112 Commonwealth Fusion Systems
113 First Light Fusion
114 General Fusion
115 TAE Technologies
116 Tokamak Energy
117 トカマク・イノベーション社
118 ロスアトム(Rosatom)
119 中国広核集団(CNNC)
【 企業・スタートアップ 】
120 TAE Technologies - 13億ドル調達のアニュートロニック核融合
121 アルファ・フュージョン - 大阪大学発のスタートアップ
122 コモンウェルス核融合システムズ(CFS) - 30億ドル調達のトカマク型リーダー
123 シャイン・テクノロジーズ - 中性子テストと医療アイソトープ生産
124 ゼネラル・フュージョン - 磁化標的核融合方式
125 タイプワン・エナジー - ステラレーター型の革新的設計
126 パシフィック・フュージョン - 9億ドルのシリーズA調達
127 ヘリオン・エナジー - 2028年商用化目標の最積極的タイムライン
128 京都フュージョニアリング - 日本発の核融合スタートアップ
【 主要研究機関 】
129 核融合におけるイタリア・ENEA核融合部門
130 核融合におけるドイツ・マックスプランク核融合研究所(IPP)
131 核融合におけるフランス・核融合研究機関(CEA)
132 核融合におけるロシア・Kurchatov研究所
133 核融合における英国・カリパープラズマセンター(CCFE)
134 核融合における欧州原子力共同体(Euratom)
135 核融合における韓国・国家融合研究所(NFRI)
136 核融合における中国・科学院プラズマ物理研究所(ASIPP)
137 核融合における日本・核融合エネルギー研究開発機構(JAEA)
138 核融合における米国・プラズマ科学研究所(PPPL)
【 研究機関・大学 】
139 日本原子力研究開発機構 - ITERプロジェクト主要参加
140 マックスプランク・プラズマ物理研究所 - ヴェンデルシュタイン7-X運営
141 高温超伝導(HTS)マグネット技術 - 次世代炉の核心技術
142 中国科学院プラズマ物理研究所 - EAST炉とAI制御研究
143 オークリッジ国立研究所 - 最先端スーパーコンピューティング支援
144 AI駆動プラズマ制御 - DeepMindによるトカマク制御の革新
145 デジタルツイン技術 - 炉設計と運転の仮想化