主なハイライト
- ヒト上皮成長因子受容体3(HER3、別名ErbB3)は、受容体チロシンキナーゼのEGFR(ErbB)ファミリーのメンバーです。その他のファミリーメンバーとは異なり、HER3は本来のキナーゼ活性を持ちませんが、HER2、EGFR、METなどの他の受容体とヘテロ二量体を形成すると、強力なシグナル伝達メディエーターとなります。この二量体化は下流のシグナル伝達経路、特にPI3K/ACTとMAPKを活性化し、これらはがん細胞の生存と増殖に重要です。
- HER3は複数の固形がんにおいて有効な標的であり、特にその過剰発現や活性化が腫瘍の進行や抵抗性に寄与しています。主な適応症には、乳がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、膵がん、前立腺がん、卵巣がん、大腸がんなどがあります。患者の選択は、HER3の発現と、場合によってはニューレグリン(HRG)のレベルに依存することが多いです。
- HER3を標的とする治療戦略には、モノクローナル抗体(例、patritumab)、抗体薬物複合体(ADC)(例、patritumab deruxtecan、HMBD-501、EO-1022)、二重特異性抗体、さらにリガンドトラップや低分子阻害薬が含まれます。
- HER3阻害薬市場は、BIZENGRI(zenocutuzumab-zbco)が承認されたのみで、まだほとんど未開発です。しかし、EO-1022、SAL007、HMBD-001、HMBD-501、patritumab deruxtecanなどの新治療法が有望なパイプラインを形成しています。
- 2024年12月、Merus NVは、NRG1遺伝子融合を有する切除不能または転移性の進行膵臓腺がんまたはNSCLCの成人患者に対する初めての治療薬であるBIZENGRI(zenocutuzumab-zbco)が、前治療による全身治療で進行した後に、FDAから加速承認されたと発表しました。承認は全奏効率と奏効期間に基づいており、承認継続は確認試験次第です。
- HER3市場の主要企業は、Merus NV、Hummingbird Bioscience、Endeavor BioMedicines、EnBio、Callio Therapeutics、Avenzo Therapeutics、Elevation Oncologyなどです。
- 2025年5月、Daiichi SankyoとMerckは、EGFR変異NSCLCを対象としたpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)のBiologics License Application(BLA)を自主的に取り下げました。この決定は、フェーズ3試験であるHERTHENA-Lung02試験のトップライン結果である全生存期間が統計学的有意性を示さなかったことを受けたものです。この取り下げは、2024年6月に発表された第三者製造施設での問題に関するComplete Response Letter(CRL)とは無関係です。
- 2025年4月、Elevation Oncologyは、新規HER3 ADCであるEO-1022の前臨床試験におけるproof-of-conceptデータを発表し、このデータはAmerican Association for Cancer Research(AACR)2025の最新のポスターで発表されました。
- 2025年1月、EnBioとAvenzo Therapeuticsは、AvenzoにDB-1418/AVZO-1418の開発、製造、商業化に関する世界的な権利を付与する独占的ライセンス契約を発表しました。
- 2024年4月、Hummingbird BioscienceはAACR 2024において、臨床段階にある抗体HMBD-001(抗HER3)の可能性を取り上げるポスターを発表しました。この発表では、新たな適応症における前臨床試験での有効性が紹介され、その根本的な治療メカニズムに関する知見が提供されました。
当レポートでは、HER3阻害薬の主要7市場(米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本)について調査分析し、各地域の市場規模と予測、現在の治療法、新薬、アンメットニーズなどの情報を提供しています。
目次
第1章 重要な知見
第2章 レポートのイントロダクション
第3章 HER3阻害薬のエグゼクティブサマリー
第4章 主な出来事
第5章 疫学市場の予測手法
第6章 主要7市場のHER3阻害薬市場の概要
- 市場シェアの分布:治療法別(2024年)
- 市場シェアの分布:治療法別(2034年)
- 市場シェアの分布:適応症別(2024年)
- 市場シェアの分布:適応症別(2034年)
第7章 HER3阻害薬:背景と概要
- イントロダクション
- さまざまな適応症におけるHER3阻害薬の可能性
- HER3阻害薬の臨床応用
第8章 さまざまな適応症における疫学と患者人口
- 前提条件と根拠
- HER3阻害薬の特定適応症の患者数
第9章 標的患者集団
- 主な調査結果
- 前提条件と根拠:主要7市場
- 主要7市場の疫学シナリオ
- 主要7市場のHER3阻害薬の特定適応症の総適格患者数
- 主要7市場のHER3阻害薬の特定適応症の総治療可能患者数
第10章 上市済みの治療法
- 主な競合
- BIZENGRI(zenocutuzumab-zbco):MERUS N.V.
第11章 新治療法
- 主な競合
- Patritumab deruxtecan(MK-1022):Merck/Daiichi Sankyo
- HMBD-001:Hummingbird Bioscience
第12章 HER3阻害薬:主要7市場の分析
- 主な調査結果
- 市場見通し
- コンジョイント分析
- 主な市場予測の前提条件
- コストの想定とリベート
- 価格動向
- アナログの評価
- 上市年と治療の普及
- 主要7市場のHER3阻害薬の総市場規模:適応症別
- 米国
- 米国のHER3阻害薬の総市場規模
- 米国のHER3阻害薬の市場規模:適応症別
- 米国のHER3阻害薬の市場規模:治療法別
- 欧州4ヶ国・英国
- 欧州4ヶ国・英国のHER3阻害薬の総市場規模
- 欧州4ヶ国・英国のHER3阻害薬の市場規模:適応症別
- 欧州4ヶ国・英国のHER3阻害薬の市場規模:治療法別
- 日本
- 日本のHER3阻害薬の総市場規模
- 日本のHER3阻害薬の市場規模:適応症別
- 日本のHER3阻害薬の市場規模:治療法別
第13章 SWOT分析
第14章 KOLの見解
第15章 アンメットニーズ
第16章 市場参入と償還
第17章 付録
第18章 DelveInsightのサービス内容
第19章 免責事項
第20章 DelveInsightについて