主なハイライト
- KRASは3つのRAS遺伝子の中でもっとも変異頻度が高く、次いでNRAS、HRASです。KRAS遺伝子変異は、膵臓がん、大腸がん、肺腺がん、卵巣がんなど、複数のタイプのがんによく関連しています。
- 主要7市場のうち、2024年のKRAS阻害薬の市場規模は米国がもっとも大きく、市場シェア全体の70%近くを占めています。
- 米国で承認されている治療薬の中では、調査期間中(2020年~2034年)の売上でKRAZATIがLUMAKRASを上回ると予測されています。
- 米国は、主要7市場中でNSCLCのKRAS変異症例がもっとも多くありました。主要7市場のNSCLCにおけるKRAS変異症例の約46%が米国で報告されました。
- G12D変異は特に治療が困難なことが多い膵臓がんと卵巣がんで認められ、G12C変異はNSCLCでより一般的です。
- 多くのKRASサブタイプには治療オプションがありません。このような場合には、pan-KRAS標的薬が有用です。より広い患者層がこのような治療を利用できます。CRCにおいてpan-KRAS阻害効果を示した薬剤の1つにonvansertibがあります。ELICIOやRevolution Medicinesなど、その他の数社もpan-KRAS療法を研究しています。
- Cardiff Oncology(onvansertib)、Immuneering Corporation(IMM-1-104)、Jacobio Pharma(JAB-23E73)、Eli Lilly and Company(LY4066434)など、多くの企業がpan-KRASにおける候補薬の開発に注力しており、対応できる標的患者層が広いことから、大きな市場の将来性が予測されています。
- KRASを標的とした薬剤開発の現状は、G12C変異に重きが置かれており、承認された治療薬や治験薬の大半は、この変異に特化してデザインされています。
- Revolutionのユニークな売りは、KRASタンパク質の活性状態、すなわち「オン」状態を標的とすることにあります。同社によれば、RASの持続的な「オン」シグナル伝達が制御不能な細胞増殖を引き起こします。そのため、Revolutionは、同社のアプローチがLUMAKRASやKRAZATIなどのKRAS「オフ」阻害薬よりも治療上有利になると考えています。
- KRAS G12D変異を標的とした治療法の開発競争には、近年複数の製薬企業が参入しています。Tyligand Pharmaceuticals(Suzhou)、 Verastem Oncology and GenFleet Therapeutics、AstraZeneca、PAQ Therapeutics、アステラス製薬などがその例で、この高い可能性を秘めた標的への関心が高まるにつれて、さらに多くの企業が急速に台頭してきています。
- KRASを標的とする治療法を開発している主要企業には、Roche/Chugai/Genentech(Divarasib)、Revolution Medicines(Daraxonrasib)、Eli Lilly and Company(Olomorasib)、Merck、Taiho、Astex Pharmaceuticals(MK-1084)、Cardiff Oncology(Onvansertib)、Genfleet Therapeutics and Innovent(DUPERT)、Elicio Therapeutics(ELI-002)、D3 Bio(D3S-001)などがあり、各社の候補薬が臨床開発のさまざまな段階にあります。
KRAS阻害薬市場の見通し
KRASは、NSCLC、PDAC、CRC、卵巣がんなど、複数のがんで頻繁に変異するがん遺伝子として確立されています。歴史的にKRASは治療不可能と考えられてきましたが、変異特異的阻害薬、特にKRAS G12C変異を標的とする阻害薬の登場により、KRASは再び注目されるようになっています。LUMAKRAS/LUMYKRAS(sotorasib)やKRAZATI(adagrasib)のようなこれらの薬剤は、不活性なGDP結合状態のKRASを選択的に阻害し、KRAS G12C変異腫瘍の既治療患者に臨床的利益をもたらします。
当レポートでは、KRAS阻害薬の主要7市場(米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本)について調査分析し、各地域の市場規模、現在の治療法、アンメットニーズ、新薬などの情報を提供しています。
目次
第1章 重要な知見
第2章 レポートのイントロダクション
第3章 エグゼクティブサマリー
第4章 主な出来事
第5章 疫学と市場予測の調査手法
第6章 KRAS阻害薬市場の概要
- 主要7市場の市場シェアの分布:治療法別(2024年)
- 主要7市場の市場シェアの分布:治療法別(2034年)
- 主要7市場の市場シェアの分布:適応症別(2024年)
- 主要7市場の市場シェアの分布:適応症別(2034年)
第7章 疾患の背景と概要
- イントロダクション
- 臨床的意義
- RASがん遺伝子と多段階的発がん過程
- 予後バイオマーカーとしてのKRAS変異
- KRAS変異と個別化医療
- 診断
- KRAS変異のバイオマーカー検査
- KRAS変異の臨床的意義:がんタイプ別
- KRAS阻害薬の診断ガイドラインと推奨事項
- 転移性大腸がんに関するESMOのガイドライン(2024年)
- 転移性大腸がんにおけるKRAS、NRAS、BRAF変異検査に関するNCCNのガイドライン(2025年)
- 非小細胞肺がんにおけるバイオマーカー検査に関するNCCNのガイドライン(2025年)
- Japanese Society of Medical Oncologyの診療ガイドライン:大腸がん治療に対する分子検査
第8章 治療
- 非小細胞肺がんの治療
- 手術
- RFアブレーション(RFA)
- 放射線治療
- 化学療法
- 免疫療法
- 膵臓がんの治療
- 肝細胞がんの治療
- 卵巣がんの治療
- 大腸がんの治療
- KRAS阻害薬の治療ガイドラインと推奨事項
- 大腸がん治療に関するNCCNのガイドライン
- 非小細胞肺がんに関するNCCNのガイドライン
- 転移性大腸がんの治療に関するESMOのガイドライン
- 非小細胞肺がん(NSCLC)の管理に関する汎アジアのガイドライン
第9章 疫学と患者人口
- 主な調査結果
- 前提条件と根拠
- 非小細胞肺がんにおけるKRAS変異
- 大腸がんにおけるKRAS変異
- 膵臓がんにおけるKRAS変異
- LGSOCにおけるKRAS変異
第10章 上市済み薬品
- 主な競合
- LUMAKRAS/LUMYKRAS(sotorasib):Amgen
- KRAZATI(adagrasib):Bristol Myers Squibb(Mirati Therapeutics)
- AVMAPKI + FAKZYNJA Co-Pack(avutometinib + defactinib):Verastem Oncology
第11章 新治療法
- 主な競合
- フェーズI/IIの新薬の安全性と有効性に関するデータ
- フェーズIの新薬の安全性と有効性に関するデータ
- Divarasib(RG6330):Roche/Chugai/Genentech
- Daraxonrasib(RMC-6236):Revolution Medicines
- Olomorasib(LY3537982):Eli Lilly and Company
- MK-1084:Merck, Taiho, and Astex Pharmaceuticals
- Onvansertib:Cardiff Oncology
- DUPERT(fulzerasib/GFH925):Genfleet Therapeutics and Innovent
- ELI-002:Elicio Therapeutics
- D3S-001:D3 Bio
第12章 KRAS阻害薬:主要7市場の分析
- 主な調査結果
- 市場見通し
- コンジョイント分析
- 主な市場予測の前提条件
- コストの想定とリベート
- 価格動向
- アナログの評価
- 上市年と治療の普及
- 主要7市場のKRAS阻害薬の市場規模:国別
- 主要7市場のKRAS阻害薬の市場規模:適応症別
- 米国の市場規模
- 米国のKRAS阻害薬の総市場規模
- 米国のKRAS阻害薬の市場規模:治療法別
- 欧州4ヶ国・英国の市場規模
- 欧州4ヶ国・英国のKRAS阻害薬の総市場規模
- 欧州4ヶ国・英国のKRAS阻害薬の市場規模:治療法別
- 日本
- 日本のKRAS阻害薬の総市場規模
- 日本のKRAS阻害薬の市場規模:治療法別
第13章 アンメットニーズ
第14章 SWOT分析
第15章 KOLの見解
第16章 市場参入と償還
- 米国
- 欧州4ヶ国・英国
- 日本
- KRAS阻害薬の市場参入と償還
第17章 付録
第18章 DelveInsightのサービス内容
第19章 免責事項
第20章 DelveInsightについて