世界の航空安全保障強化のために、空港でのセキュリティを抜本的に改善するという期間1年半の突貫仕事は大詰めを迎えている。このプロジェクトでは、世界ベースで総勢8万人の検査官(米国内で5万人)が動員され、数十億ドル規模のハイテク検査機器が設置された。
これは相当な偉業といえる。しかし国土安全保障分野の調査・分析を専門とするHomeland Security Research Corporation (HSRC)は、定期航空便の荷物検査が実施されていないことから航空安全保障には大きな穴があいており、渡航者の安全性と航空業界の経済的健全性を著しく損なっていると結論付けた。
航空荷物には、貨物、エキスプレスカーゴ、航空便などが含まれる。
一般の人にはあまり意識されていないが、政府、航空業界はこの状況を認識している。以下はその危機感を示す公開された2つの発言。
- パイロット組合のプレジデントのBob Miller氏(2003年1月)
「一見すると航空貨物とセキュリティの問題とは無関係に見えるが、現実には我々のテロ対策の最も大きな抜け穴となっている。例えばアメリカの旅客機に積まれる荷物の60%のうち、危険物を探知するための検査を受けているのはわずか5%である」
- 米連邦会計監査院(GAO)(2002年12月)
「米連邦航空局(FAA)も運輸安全局(TSA)もGore Commissionが提言したような航空荷物に対するセキュリティのための包括的計画を立案しなかった。計画が立案されていれば、荷物の安全を確保するシステムを整備するという航空および輸送の安全法(Aviation and Transportation Security Act)の要件を満たす最初の一歩となっていただろう。TSAは、貨物のセキュリティ対策のため長期的計画を立案すると言っていたが、期限を特定しなかった」
実情ははっきりしている。
- 現在の世界の航空貨物量は年間700万トンで、平均6.4%の年率で増加すると見込まれている。
- 一般に航空荷物は、リスクにさらされるのは貨物輸送機のみと考えられるため、二義的なリスクと見られがちである。しかし現実には、旅客機のペイロードの約50%が未検査の航空荷物である。
GAOの最近の報告によれば、今では、この貨物のうちセキュリティのために検査を受けているのは5%以下である。
- 航空荷物は様々なタイプのテロ攻撃にとって簡単で、接近しやすいプラットフォームである。荷物に爆発物を仕掛け、作動させるのに何の専門技術もいらないし自爆する必要もない。荷物は、大量破壊兵器や通常兵器の輸送、使用のために利用できるのである。
- 未検査の航空荷物は、その安全性、セキュリティの面のみならず、テロの成否にかかわらず、経済的損失を増やし、すでに打撃を受けている航空業界、経済全般に追い討ちをかける公算が大きい。航空荷物を狙ったテロによる経済的損失は5,000億ドル強と試算されている。